盆休みである。
親父殿はいよいよ弱り果て、お盆中にご先祖があっちに連れてっちゃうんじゃないかという勢いというか勢いがないというか。
日々弱っていくのを毎日目にして、「人間はこうやって衰えて死ぬのだ、よく見ておけ」
というのを教えられてる気がする、そんなこと教えられたくないんだが。
病室の窓から燦燦と陽光が、というわけにはいかない北向の部屋ではあるが、
それでも昼日中は明らかに昼日中の体をなす明るい自然光に包まれた病室で、
自分が見舞いに行くと「おおもうこんな時間か?」と問われる、
自分がいつも仕事帰りの晩に行くのを覚えていてそう問うのだ、
「晩に息子が来る」のを覚えてくれてるのはいいけど、
いま現在が昼であるという状況把握がまったく出来てないってことでもあって脱力する。
なんにせよ意思の疎通ができるうちに実家に帰らせて最後を看とってあげたい、
盆が終わって介護系の調整がつかないと無理なのでそれまで死ぬなって感じ。
「向きか?」と聞くとそうだというのであっちが東、こっちが西、と教えたが
どうも怪しいと思っていた。
今日行って、すこし話をしたら「おまえはどこで寝るんや」と聞く。
「家に帰って寝るよ」と答えると、へぇ、そうか、と意外そうな顔をする。
続いて「僕(父の自称は僕)はどこで寝るの?」と聞くので
「ここで寝るし、というか、いま寝てるやん」と答える。
ああそうだった、と言うかのようにうなずきながら笑ったので安心(?)したが、ふと、
「いま入院してるってわかってる? ここ病院やで?」と聞くと、
やはり笑いながら、弱々しく首を振り、
「なんにもわからんw」と答えた。
やっぱり昨日の問いも方角じゃなく、真面目にどこにいてるかわからんかったんだな、
とちょっとだけショック。
まー、「ずっと病院で寝たきりな事」が苦にならないくらいボケてるということなら、
ある意味気がラクではあるが。
しばらくして、「今日、何も食べてないわ」と告白するように言う。
もうずっと食欲が無いのだが、食べるのをサボると「体力が落ちる」と、母に叱られるので無理くり食事をするここ半年だった。
その記憶があったので、そんなふうにボソッと口にしたんだと思う。
お父上、今日だけじゃなくもう三週間以上点滴のみで、何も口にしておられませんよと。
「そら食べられへんからなw,喉に詰まるから」と言った。
父の喉からはもう「咀嚼する」という機能が失われたようで、
食物どころか水すら嚥下できずにむせ返るんだ、
母ももう、食事は? なんて決して聞かない。
少し間をおいて、父が「朝に、なにか買ってきてや」と言った。
今が平日の晩で自分が会社帰りということはさっき言ったのだがそれはさておき、
「買っても食べられへんで、喉に詰まるからな」と諭す。
すると驚くことに「あかんかったらそれはそれ(でええやん)」とニコッと笑う。
いやいや全然無理やからw、
下手にものを口に入れて窒息して死なれたらかなわんがなと思いつつ、
「お腹減ってないやろ?」と聞くと、うん と頷く。
「とりあえず今は晩やから買いにいかれへんで」と言うと、
「そら今はあかんわw」とまた笑った。
たぶん5分後には何言ったか忘れてるだろうからこれはこれでいいんじゃなかろうか。
昨晩、今晩はセキも出ず、楽そうでよかった。
日曜はずっとセキしてて、痰が出せないので喉奥から掻き出す簡単なお仕事を1時間半ほどした。
今日から、なにがあったか、なにを話したかポツポツと、自分の為に記録しようと思う。
「大盛りと味噌汁、タマゴ」。
不細工な中国語人店員が片言で注文を伝え、30秒も経たぬうちに丼が出てくる。
反対側のカウンターを見ると、髪の薄くなったサラリーマンが
携帯電話を見ながらニヤニヤ笑っている
タマゴに醤油を入れかき回し、七味と紅生姜を牛丼にかける
何も考えない、メシが出てきたら条件反射でかき回して掻きこむだけだ。
「アリガトーゴザイマシタ ゴヒャクハチジュエンニナリマス」
茶で口を濯いで外に出る。
牛丼屋の外に出ると、駅前のパスタの店の前に行列ができていた。
黒板の立て看板に「本日 女性のお客様半額サービスデー」と書きだしてあった。
列に並んでいるのは、家族連れやカップルが多い。
「ケッ、馬鹿じゃねえのこのクソ寒いのに。」
強風吹きすさぶ軒先でも、誰もが楽しそうにしている。
父は子を抱き上げ、恋人同士は繋いだ手を離さない。
これが食事だ。
食べて心が豊かになる食べ物が、食事だ。
オレが食べたのは、ただのエサだ。
ただ生きるために採った、エサだ。
ほんとファッションデザイナーってのはアホばっかだな、っつか麻薬やってモデル食いまくってるんだろ羨ましい。
よく知らないけどこれもTBSが噛んでるの?
噛んでるならダメポ、噛んでないなら頑張って♡
オザワチルドレンの一人とエレベーター一緒になった。



by 2003-iza
無慈悲かつ徹底的な注視